少女趣味こうなあ 長屋版 三
Auguries of Innocence
To see a World in a Grain of Sand
And a Heaven in a Wild
Flower,
Hold Infinity in the palm of your hand
And Eternity in an
hour
一粒の砂に世界を見、
一輪の野の花に天国を見る
手のひらに無限を乗せ
一瞬のうちに永遠を感じる
ご隠居 今月は、ウィリアム・ブレークの詩です。一七五七年生れ、一八二七年に亡くなったウィリアム・ブレイクはイギリスロマンティシズムを代表する詩人にして画家。
この詩は、無心の前ぶれという長詩の最初の四行です。
簡単な英文ですが、持っている意味はとても深いと思うねん。
虎さん 映画の『博士の愛した数式』(二〇〇六年)でこの詩が朗読されたな。
熊さん ご隠居は、この詩にはまって、いつも言うていたことがありまんな。だいたいどこが気にいらはりましたんや?
ご隠居 そやなあ、この詩を最初に知ったのはいつやったかなあ。その時は余りどうということもなかったんやけど、年をとってきたら、なんかとても心に入ってくるんや。
人は一粒の砂にも、一輪の野の花にも世界を感じ、天国を感じることができる。死という終点を持ち有限の存在である人間が、無限を自らのものとし、一瞬に永遠を感じることもできるのだというのが、おうてるか、間違うているか知らんけど、わしの大体の解釈なんやけど、年取って死が近うなったら余計にそうやなあと思うんや。それとともに、随分無駄な時間を過ごしたなあとも思うんや。
虎さん そうでんな。ご隠居も無駄に年ばかっりくいましたなあ。
ご隠居 お前には言われとうないけど、そう思うなあ。
虎さん 今回は随分素直でんなあ。余り素直になると死期が近いとも言いまっせ。
ご隠居 お前もわしをちゃかしてばかりおらんと、一瞬のうちに永遠を感じるような体験をしやなあかんぞ。
虎さん せやけどそんな体験はしようと思って出来るもんと違いますしな。
熊さん そういえば、茨木のり子の「ギラリと光るダイヤのような日」という詩にもどっかつながるとこありますなあ。
ご隠居 そうやなあ、ということで、来月はその詩やな。